


開業への思いを「カタチ」に
西九州新幹線(武雄温泉・長崎間)の今とこれからをつなぐ!
開業への思いを「カタチ」に
西九州新幹線(武雄温泉・長崎間)の今とこれからをつなぐ!
2022年9月23日、西九州新幹線が開業しました。それぞれ異なる立場から西九州新幹線開業に立ち会った5名が、開業を迎えた率直な感想や今後の抱負を語ります。
PROFILE

西尾 麻衣子
JR九州
2013年入社。西九州新幹線唯一の女性運転士として、9月23日の開業日には長崎駅を始発で発車する「一番列車」の運転を担当。長崎県出身。

甲木 三郎
JR九州
2009年入社。入社以来、10年以上を長崎で過ごす。JR九州長崎支社の広報担当として、西九州新幹線に関する広報の主軸を担う。福岡県出身。

桒畑 笑莉奈
NIB(長崎国際テレビ)
2019年入社。アナウンサーとして活躍中。自ら取材した地域の情報を視聴者に伝える。西九州新幹線についても取材を重ねた。宮崎県出身。

山之内 俊樹
JRTT(鉄道・運輸機構)
2017年入社。土木系職員として、2020年12月から九州新幹線建設局の長崎鉄道建設所で西九州新幹線の建設に携わる。長崎県出身。

横畑 汐音
JRTT(鉄道・運輸機構)
2019年ANAに入社。客室乗務員として国内線・国際線に乗務し、2021年10月からJRTTに出向中。広報担当として西九州新幹線の情報発信を行う。大阪府出身。

Q 皆さんは、どのように西九州新幹線に携わりましたか?
西尾: 運転士として西九州新幹線「かもめ」の一番列車を運転しました。現在は車掌業務を担当しています。2022年初めには、西九州新幹線の乗務員が使用するマニュアルを作成しました。
甲木: JR九州長崎支社で新幹線開業までのPRを行いました。大村車両基地の公開や新幹線車両「かもめ」のお披露目など、報道機関を通じて情報発信を行いました。
桒畑: 西九州新幹線の開業に向けて、西尾さんをはじめとする関係者の方々にお話を伺いながら取材を行いました。開業日は長崎駅から中継を行い、一番列車の出発や開業でにぎわう駅の様子などをお伝えしました。
山之内: 最も現場に近い、長崎駅近くの建設所で勤務しています。諫早駅から長崎駅までの約20kmの区間について橋りょうやトンネルなどの土木構造物をつくる業務を担当しました。
横畑: JRTTの広報担当として、西九州新幹線開業をPRしました。SNSや広報誌を通じて、開業に向けた機運醸成やこれまで表に出る機会が少なかったJRTTの業務を紹介しました。
Q 開業日までの印象的な出来事は何ですか?
西尾: 2022年5月10日の試験走行初日です。私は「かもめ」の運転を担当しており、諫早駅で行われたセレモニーで花束をいただきました。当日は諫早駅への車両の入線が1時間ほど遅れてしまったにもかかわらず、市長や園児の皆さんなど、多くの方が温かく迎えてくれたことがうれしかったです。地元の方々が新幹線開業を楽しみにしていることを肌で感じられました。
横畑: 私も試験走行の初日です。初めて西九州新幹線の現場へ行きましたが、JRTTの広報担当として市長や地元の方々にインタビューをする中で、初めて「かもめ」を迎える地域の熱量を感じました。
山之内: 私はその日、担当区間のトンネル出口にいたのですが、初めて新幹線が走る姿を見て、感動で胸が熱くなりました。
甲木: 山之内さんはどこのトンネルを担当していたんですか?
山之内: 久山トンネルです。諫早駅を出て長崎方面へ5kmほど進んだ所にあります。
西尾: そうなんですね。今度通過する時には意識して見てみます。


Q まちの雰囲気の変化は感じますか?
桒畑: 私は長崎に来て4年目で、そのほとんどがコロナ禍でしたが、最近は人の多さが開業前とは格段に違うと感じています。コロナ禍では皆さんが苦労されている様子を取材してきたので、少しずつ日常を取り戻していると思うとうれしくなりました。
西尾: 私は長崎県出身ですが、10年前に長崎を離れるまで新幹線開業の話は聞いたことがありませんでした。西九州新幹線の開業が近づき、久しぶりに長崎に帰って来た時はその変わりように驚きました。駅もホテルも新しくできていて、まるで違うまちにやってきたようでした。
甲木: 長崎県出身ではありませんが、11年ほど住んでいます。ここ2、3年で駅周辺がどんどん変わってきていて、ますます発展していくと思います。西九州新幹線沿線のお店でも「新幹線開業」という文字を見る機会が多くなり、地域全体でどんどん機運が高まっていることを感じました。


Q 新幹線開業を通して初めて知ったことはありますか?
山之内: 鉄道の開業に向けた業務に携わる中で、初めて知ったことがたくさんありました。例えば、開業前に鉄道施設の安全性を確認する監査・検査では、新幹線が安全に走行できることを確認するために全線を歩くことを知りました。
甲木: 全線だと約66㎞ありますが、何日かに分けて歩いたんですか?
山之内: そうです。職員で分担しながら、長い時は2週間かけて全線を歩きました。歩いた後も事務所に戻り、見つかった調整箇所にどう対処するか、関係者と入念な打ち合わせをしました。
桒畑: 私は鉄道に関して詳しくなかったので、取材を通して初めて知ることも多かったです。特に、西尾さんを取材する中で「かもめ」の車内を紹介してもらい、あらためて快適さを感じました。これまでは移動手段としか考えていなかった鉄道ですが、多くの人が関わってさまざまな工夫が施されていることを知り、見る目が変わりました。
甲木: そういえば、JRTTでは駅づくりにもこだわっていましたよね。市民の皆さんにも参加してもらい、一緒に駅のデザインを完成させていくのがすごくいいなと思いました。
山之内: ありがとうございます。例えば長崎駅のガラススクリーンや、新大村駅にあるタイルは1枚1枚市民の皆さんにつくっていただきました。駅の内覧会では、お孫さんが描いたタイルをご覧になった方が涙を流されることもありました。



Q お互いの仕事について気になることはありますか?
横畑: 桒畑さんはご自身で取材や原稿を書かれたうえでニュースをお伝えされていると聞いて、仕事の幅広さに驚きました。情報発信をするうえで心掛けていることはありますか?
桒畑: 取材をした方の思いを正しく間違いなく伝えられるよう、コミュニケーションを積極的に図るようにしています。初めて取材を受けられる方にとっては、カメラを向けられるとさらに緊張が増してしまいます。その緊張をできる限りほぐし、本当の思いを引き出せるような雰囲気づくりが大事だと思っています。取材を受けていただくからには一つひとつ、丁寧に、本当の思いをしっかり伝えられるような番組づくりを心掛けています。
山之内: 西尾さんは西九州新幹線唯一の女性運転士ということで、とてもカッコいいなと思いました。運転士だからこそ感じられる、運転席から見た260km/hはどのような景色ですか?
西尾: 新幹線は揺れが少なく、高架やトンネルも多いので、そこまで速さは感じません。例えるなら、高速道路を運転している景色と似ています。一方、在来線の特急を運転する時は景色の変化やスピードが感じられるので、どちらも違った発見があります。




Q 最後に、今後の抱負を教えてください。
甲木: まずは地元の方々に西九州新幹線を利用してもらいたいですね。そのためにも、PRを通して佐賀県・長崎県の魅力を発信し、全国の方に西九州新幹線に乗っていただけるよう今後も地域一丸となって取り組んでいきたいです。
桒畑: 開業に向けては、毎日のように地元の方々に西九州新幹線に関する情報発信を行ってきました。新幹線が開業したから終わりではなく、今後も継続して情報発信をしていくことで全国の皆さんに親しみを感じてもらい、多くの方に長崎を訪れていただきたいです。
西尾: お客様とお会いする機会も多いので、「また乗りたい」と思ってもらえるよう日々の業務に励みたいです。新幹線開業という何十年に一度あるかないかの貴重な経験を後輩に伝えていくことで開業までのプロセスを知ってもらい、会社全体で安全への意識をさらに高めていきたいです。
山之内: 長崎駅周辺もまだ再開発が進んでいて、新幹線の開業はゴールではなく、まちの発展に向けたスタートだと思っています。また、JRTTの職員として開業という一つの区切りに立ち会えた貴重な経験は、今後、他の路線に携わることになっても活かしたいです。
横畑: 新幹線の開業はただ移動が便利になるだけではなく、地域そのものが活性化するきっかけになると感じました。JRTTの役割はこれまで表に出る機会が少なかったので、今後も積極的な情報発信を通して地域の盛り上がりやJRTTの取り組みを皆さんに知っていただきたいです。


