海外業務実績の概要(2021年度)

令和3年度

1.海外高速鉄道調査等業務

(1)インド高速鉄道計画

 インドでは 7 路線の高速鉄道が計画されており、平成 25 年 5 月の日印首脳会談の際に「日印共同出資による共同調査を実施」する旨が共同声明として出されました。
 また、平成 27 年 12 月の日印首脳会談に際し、日印両国政府間で、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道への新幹線システム導入に関する覚書として、「高速鉄道に関する日本国政府とインド共和国政府との間の協力覚書」が締結されました。本計画推進のため、国土交通省等の関係機関との緊密な連携の下、調査、設計等の業務に機構職員が参画しております。
 令和 3 年度は、詳細設計業務について、業務を担う日本コンサルタンツ(株)に対し、JRTT職員 1 名を出向させ人的支援を行うとともに、JRTT職員 4 名が補強として技術協力を行いました。また、国土交通省発注の「インド建設業界の人材育成業務」において、土木工事品質管理に係る研修教材を作成したほか、(一社)海外鉄道技術協力協会発注の「インド軌道建設業界への人材育成業務」において研修教材を作成しました。
 さらに、東日本旅客鉄道(株)及び海外交通・都市開発事業支援機構とともに、日本高速鉄道電気エンジニアリング(株)(以下「JE」という。)の業務内容に係るインド高速鉄道公社(以下「NHSRCL」という。)との協議を含む出資に向けた調整等を短期間で行い、令和 3 年 9 月 1 日に電気パッケージにおいて発注者であるNHSRCLの業務の代理・代行を担うJEを設立するとともに、JEに対する役職員の派遣を通じた技術支援を行いました。JEの設立は、海外インフラ展開法に基づき機構が海外の高速鉄道事業へ出資した初めての案件となります。

(2)タイ高速鉄道計画

 平成 28 年 8 月、日タイ両国大臣間で鉄道協力に関する覚書が締結され、バンコク・チェンマイ間について新幹線システムによる整備が行われることとなりました。
 これに関連して、令和 3 年度は、国土交通省発注の「令和 3 年度 バンコク・チェンマイ間高速鉄道計画における事業費縮減等の検討調査」において、タイにおける基礎情報等の情報収集を実施し、需要予測、事業費縮減の検討に係る調査を行いました。
 上記の調査及び過年度の調査を踏まえて、現在、タイ政府内において事業採択に向け検討中です。

タイ高速鉄道に係る会議

(3)ジャワ北幹線高速化事業

 平成2812月、インドネシア政府から日本政府に対し、ジャカルタ・スラバヤ間約720km の北幹線鉄道を最高速度160km/h程度で結ぶ高速化に向けた協力依頼がなされました
 令和3年度は、(独)国際協力機構(以下「JICA」という。)発注の「インドネシア国ジャワ北幹線準高速化事業準備調査」に、共同企業体の構成員として参画し、土木・施設計画に係る調査を行いました

2.国際協力業務

(1)海外への専門家派遣及び各国研修員等の受入

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、専門家派遣の延期、研修員の受入れを中止したため、令和3年度の実績は、昨年同様、専門家派遣0人、研修員等受入0人でした。

専門家派遣数の推移(平成29 年度~令和3 年度)

  年 度 29 年度 30 年度 元 年度 2 年度 3 年度
専門家派遣数(人) 52 36 40 0 0


研修員等の受入数の推移(平成29 年度~令和3 年度)

  年 度 29 年度 30 年度 元 年度 2 年度 3 年度
研修員等受入数(人) 333 385 435 0 0

 平成283月に始動したJICA制度整備支援プロジェクトに伴いJICA内に設置されているインド国高速鉄道建設事業に係る技術基準/設計支援委員会にJRTT職員名が参加するとともに、同委員会の下部組織である分科会にJRTT職員延べ14名が参加しました。

(2)国際学術会議等への参加

 JRTTは、世界の鉄道技術関係者との交流を図り、日本の鉄道システムの海外展開の一助となし、また、JRTTの鉄道建設に関する技術力についてアピールすること等を目的として、国際学術会議等へ参加し、講演やプレゼンテーションを実施しました。

国際学術会議等への参加実績

会議等名 主催者等 開催国
(都 市)
時 期 発表数(件)

3回IHRAウェブセミナー

一般社団法人国際高速鉄道協会(IHRA) オンライン開催

令和3 年6 月   (オンライン開催)

1
火山地域の応用地質と岩の力学に関する国際ワークショップ 国際岩の力学会
国際応用地質学会
日本
(福岡)
令和3 年9 月   (オンライン開催) 1
東アジア交通学会(EASTS)国際会議 EASTS 日本
(広島)
令和3 年9 月   (オンライン開催) 1
(3)鉄道分野における規格の国際標準化

 平成224月に、(公財)鉄道総合技術研究所内に「鉄道国際規格センター」が設立され、鉄道技術の国際標準化に戦略的に取り組んでいます
 JRTTは、ISO/TC269、IEC/TC9等にJRTT職員7名が参加し、国際規格に関する日本原案の作成等に貢献しています

ISO/TC269委員会・作業部会等(令和3年度機構職員参加)

区  分 名  称
国内委員会 鉄道分野
分科委員会 インフラストラクチャ


IEC/TC9の委員会・作業部会等(令和3年度機構職員参加)

区  分

名  称

国内委員会

鉄道用電気設備とシステム

国内作業部会

輸送システムの管理と指令

銅及び銅合金ちょう架線

集電系の特性評価法

き電シミュレータ

交流電力補償装置

直流開閉装置

電力システム

変電所用コンバータ

架空電車線路

(4)海外関係機関との技術交流等

 機構の技術力や経験を活用し、海外関係機関との技術交流等を行いました。

 スウェーデン高速鉄道は、同国内の主要都市(ストックホルム、ヨーテボリ及びマルメ)を結ぶ計画です。平成255月に国土交通省とスウェーデン産業省との間で鉄道分野における協力に関する覚書が締結されたことから、本格的な技術交流を開始しました。令和3年度は、4月及び6月にスウェーデン運輸庁とWeb会議を開催(合計3回)し、両国の高速鉄道に関する意見交換を行いました。

スウェーデンとの技術交流