船舶共有建造事業の概要
船舶共有建造の事業概要について説明します。
JRTTの共有建造業務
JRTTでは、国内旅客船又は国内貨物船の建造について、共有建造業務を通じて低利・長期資金を供給し、また、建造に関する技術的支援を行っています。
船舶共有建造制度の仕組み
内航海運事業者(以下「事業者」という)の申込みに応じて、事業者とJRTTが費用を分担して船舶の建造を造船所に共同発注します。また、完成までの間の工事監督や検査も共同で行います。完成した船舶は、費用の分担割合に応じて事業者とJRTTが一定期間(おおむね耐用年数)共有します。
この共有船は事業者が使用・管理していただき、これにより生じる収益及び費用についてはすべて事業者のものとなります。JRTTに対しては、共有船のJRTT持分の使用料として、元金均等割賦弁済方法により計算した元金及び利息に相当する金額について共有期間を通じて支払っていただくことにより、JRTTが分担した建造費用を弁済していただくことになります。また、共有終了までの間、共有船のメンテナンスサポートも行っています。
最終的に、共有船は、共有期間満了時に減価償却後の残存簿価でJRTTの持分を買い取っていただくことにより、海上運送事業者の100%所有船となります。
スキーム図
船舶共有建造制度の多様なメリット
原則として担保が不要
船舶の建造資金を金融機関から借り入れた場合は、担保を用意する必要がありますが、共有制度の場合はJRTTが共有船の持分を直接所有しますので、原則として担保は不要です。したがって自己資金の調達に必要な担保を用意すれば船舶の建造が可能です。
低利・金利の選択が可能
固定金利及び5年目毎の見直し金利が選択できます。また、固定金利と5年目毎の見直し金利を併用することもできますので、事業の見通しが立てやすく、安心してご利用いただけます。なお、JRTTには拘束預金の制度がないため、実質的な金利負担が増えることは一切ありません。
長期の返済
使用料の支払期間はおおむね共有船の耐用年数となっています。船舶の種類に応じて7年から15年の長期の返済が可能ですので、無理なくご返済いただけます。
技術支援
共有船は、JRTT所有船として建造しますので、JRTTから多様な技術支援を受けることが可能です。JRTTでは、このために専門の技術者が対応しています。これは他の金融機関からの融資にはない大きなメリットです。
税金の優遇
所有権保存登記には、共有船のJRTT持分に係る登録免許税が免除されます。
金利の「5年毎の見直し方式」について
使用料金利は、契約・起工・進水・竣工の各時点の金利を平均して決定されます。5年毎見直し(変動)方式では、竣工月から5年毎に再度その時の情勢に応じた5年間の金利を決定していきます。
国の運輸政策の実施機関
JRTTは、国の運輸政策の実施機関として、内航船舶の整備を推進するための支援を行っています。
低利・長期資金を安定供給
海洋国家であるわが国にとって、船舶は経済活動や国民生活に必要不可欠なインフラストラクチャーですが、その整備には多額の初期投資がかかります。船舶の整備主体となる海上運送事業者は、その大多数を自己資本の蓄積に乏しい中小企業によって占められており、船舶の整備の推進には、民間の金融機関では融通が困難な低利・長期資金の供給などによる支援が必要です。JRTTでは、財政投融資計画に基づいて国から借り入れた資金を主な原資として、船舶の共有建造を通じて、低利の長期資金を安定的に供給しています。
国内の船舶の多くが利用
JRTTが共有する船舶は、国内の船舶建造シェアの半分近くを占めており、保有総トン数は旅客船・貨物船ともに国内最大です。
国内で唯一船舶共有建造制度を採用
海上運送事業者と共同して船舶の建造を行う共有建造制度は、他の金融機関で行っている建造資金の融資に比べて、担保、技術援助などの面においてメリットのある制度です。この制度を採用しているのはJRTTだけです。
多様な政策課題に貢献
- わが国における内航海運の役割は極めて高く、輸送機関別分担率をみると、国内貨物輸送量の約3割を占めています。JRTTは、低利・長期の資金供給を通じて、内航海運の維持・発展に貢献しています。
- 海上運送事業者の多くは中小企業によって占められています。このため、JRTTの業務は中小企業に対する支援の面でも重要な役割を果たしています。
- 離島航路などの旅客定期航路は地域住民の交通手段として不可欠です。JRTTは、その安全かつ確実な輸送サービスの確保を資金面及び技術面から支えています。
- 地球温暖化対策としての二酸化炭素排出量の削減に資するモーダルシフトや地球環境保全対策としての海洋汚染防止に資する船舶のフルダブルハル化等を推進しています。JRTTでは、これに向けた政策誘導に貢献しています。
- 少子高齢化対策として、バリアフリー化船の建造促進に取り組んでいます。
- JRTTが共有建造業務と併せて行っている技術支援業務は、船舶の安全性の向上や高度化などの面で大きなメリットを発揮しています。