海外業務実績の概要(2022年度)
令和4年度
1.海外高速鉄道調査等業務
(1)インド高速鉄道計画
インドでは 7 路線の高速鉄道が計画されており、平成 25 年 5 月の日印首脳会談の際に「日印共同出資による共同調査を実施」する旨が共同声明として出されました。また、平成 27 年 12 月の日印首脳会談に際し、日印両国政府間で、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道への新幹線システム導入に関する覚書として、「高速鉄道に関する日本国政府とインド共和国政府との間の協力覚書」が締結されました。本計画推進のため、国土交通省等の関係機関との緊密な連携の下、調査、設計等の業務にJRTT職員が参画しています。
令和 4 年度は、JICC(日本コンサルタンツ(株)(以下「JIC」という。)を中心としたコンソーシアム)が実施する詳細設計調査業務及び軌道工事の施工監理業務について、JICCを構成するJICに対し、詳細設計調査業務については 2 名が補強として、軌道工事の施工監理業務については職員 2 名が出向として技術支援を行いました。また、(一社)海外鉄道技術協力協会発注の「インド軌道建設業界への人材育成業務」において研修教材を作成しました。
さらに、令和 3 年度に東日本旅客鉄道(株)、海外交通・都市開発事業支援機構との共同出資により設立した電気パッケージにおいて発注者であるインド高速鉄道公社の業務の代理・代行を担う日本高速鉄道電気エンジニアリング(株)(以下「JE」という。)に対して役職員 6 名を派遣して技術支援を行いました。
出資を行ったJE事業については、事業の進捗状況や資金収支等をJEへのヒアリング実施等を通じて把握及び分析を行いました。これらの分析結果等について第三者委員会へ諮問を行うなど、適切にモニタリングを実施しました。
(2)台湾高速鉄道延伸計画
平成 19 年に開業した台湾高速鉄道は、主に新幹線方式が採用されたことから、日台の友好の象徴になっています。現在台湾高速鉄道において、左営駅から屏東方面の延伸計画があり、台湾側は、日本の新幹線の地震対策に関する知見を求めている状況でもあります。
これに関連して、令和 4 年度は、国土交通省から「台湾高速鉄道延伸計画及び軌道構造における脱線対策に関する調査」を受注しました。調査においては、左営車両基地付近の土木工事・電気設備等の改修に関して、日本の事例を踏まえて課題整理を行うとともに、日本における軌道構造における脱線対策を整理しました。
台湾高速鉄道延伸計画に係る会議
(3)ジャワ北幹線高速化事業
平成 28 年 12 月、インドネシア政府から日本政府に対し、ジャカルタ・スラバヤ間約720km の北幹線鉄道を最高速度 160km/h 程度で結ぶ高速化に向けた協力依頼がなされました。
令和 4 年度は、(独)国際協力機構(以下「JICA」という。)発注の「インドネシア国ジャワ北幹線準高速化事業準備調査」に、共同企業体の構成員として継続して参画しました。
2.国際協力業務
(1)海外への専門家派遣及び各国研修員等の受入
新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止していた専門家の派遣、研修員等の受入れを再開し、令和 4 年度の実績は、専門家派遣 20 人、研修員等受入 25 人でした。
専門家派遣数の推移(平成30 年度~令和4 年度)
年 度 | 30 年度 | 元 年度 | 2 年度 | 3 年度 | 4 年度 |
専門家派遣数(人) | 36 | 40 | 0 | 0 | 20 |
研修員等の受入数の推移(平成30 年度~令和4 年度)
年 度 | 30 年度 | 元 年度 | 2 年度 | 3 年度 | 4 年度 |
研修員等受入数(人) | 385 | 435 | 0 | 0 | 25 |
平成28年3月に始動したJICA制度整備支援プロジェクトに伴いJICA内に設置されているインド国高速鉄道建設事業に係る技術基準/設計支援委員会にJRTT職員3名が参加するとともに、同委員会の下部組織である分科会にJRTT職員13名が参加しました。また、令和 3 年 11 月に設置されたインド国高速鉄道プロジェクト電気パッケージ詳細設計に係る国土交通省第三者委員会にJRTT職員 1 名が参加するとともに、下部組織である電力分科会、信号通信分科会にJRTT職員 5 名が参加しました。
(2)国際学術会議等への参加
JRTTは、世界の鉄道技術関係者との交流を図り、日本の鉄道システムの海外展開の一助となし、また、JRTTの鉄道建設に関する技術力についてアピールすること等を目的として、国際学術会議等へ参加し、講演やプレゼンテーションを実施しました。
会議等名 | 主催者等 | 開催国 (都 市) |
時 期 | 発表数(件) |
---|---|---|---|---|
世界トンネル会議 |
国際トンネル協会 |
デンマーク |
令和4 年9 月 (オンライン開催) |
1 |
(3)鉄道分野における規格の国際標準化
平成22年4月に、(公財)鉄道総合技術研究所内に「鉄道国際規格センター」が設立され、鉄道技術の国際標準化に戦略的に取り組んでいます。
JRTTは、ISO/TC269、IEC/TC9等にJRTT職員6名が参加し、国際規格に関する日本原案の作成等に貢献しています。
ISO/TC269委員会・作業部会等(令和4年度機構職員参加)
区 分 |
名 称 |
国内委員会 |
鉄道分野 |
分科委員会 |
インフラストラクチャ |
国内作業部会 |
バラストレス軌道 |
軌道品質評価 |
IEC/TC9の委員会・作業部会等(令和4年度機構職員参加)
区 分 |
名 称 |
国内委員会 |
鉄道用電気設備とシステム |
国内作業部会 |
き電シミュレータ |
交流電力補償装置 |
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電力システム |
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変電所用コンバータ |
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スペシャルWG |
UGTMS |
(4)海外関係機関との技術交流等
JRTTの技術力や経験を活用し、海外関係機関との技術交流等を行いました。
① スウェーデン
スウェーデン高速鉄道計画は、同国内の主要都市(ストックホルム、ヨーテボリ及びマルメ)を結ぶ計画である。平成25年5月に国土交通省とスウェーデン産業省との間で鉄道分野における協力に関する覚書が締結されたことから、本格的な技術交流を開始しました。
令和4年度は、4月、5月及び6月にスウェーデン運輸庁と高架橋に関するWeb会議を開催(合計3回)し、9月にはスウェーデンで開催された日・スウェーデン鉄道協力会議等に参加し、高速鉄道に関するプレゼンテーションと意見交換を行いました。
スウェーデンとの技術交流
② イギリス
令和4年12月にイギリスで開催された日英鉄道協力会議に参加し、新幹線のコスト削減に関するプレゼンテーションを行い、意見交換を実施しました。
イギリスとの技術交流