海外業務実績の概要(2018年度)

平成30年度

1.海外高速鉄道調査等業務

(1)インド高速鉄道計画

インドでは7路線の高速鉄道が計画されており、平成24年10月には、日印政府間で高速鉄道に関する覚書が締結され、平成25年5月の日印首脳会談の際に「日印共同出資による共同調査を実施」する旨が共同声明として出されました。また、平成27年12月の日印首脳会談に際し、日印両国政府間で、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道への新幹線システム導入に関する覚書として、「高速鉄道に関する日本国政府とインド共和国政府との間の協力覚書」が締結されました。本計画推進のため、国土交通省等の関係機関との緊密な連携の下、調査、設計等の業務にJRTT職員が国内及び現地において参画しています。
平成30年度は、詳細設計業務について、業務を担うJICに対し、JRTT職員6名を出向させ人的支援を行うとともに、JRTT職員6名が補強として技術協力を行いました。

(2)タイ高速鉄道計画

平成28年8月、日タイ両国大臣間で鉄道協力に関する覚書が締結され、バンコク・チェンマイ間について新幹線システムによる整備が行われることになり、現在、タイ政府内において事業採択に向け検討中であります。
平成30年度は、業務の受注に向け、国土交通省等の関係者からの情報収集を行うとともに、国土交通省によるタイ国運輸大臣の表敬訪問及び国土交通省とタイ国輸送交通計画企画事務局との会合に、JRTT職員が同行しました。

(3)マレーシア・シンガポール高速鉄道計画

平成25年2月、マレーシアとシンガポール両政府は、両国を連絡する高速鉄道建設に正式合意しました。平成28年 12月にマレーシア・シンガポール間で、車両等資産会社の事業権の入札を平成29年に行うこと、開業目標を令和 8 年(平成38年)とすることについて二国間協定を締結した。平成30年5月にマレーシアが財政難を理由に計画中止を表明したが、平成30年9月に二国間で令和2年(平成32年)5月31日までの計画延期と令和13年(平成43年)の開業を目指すことに合意しました。
平成30年度は、国土交通省の「マレーシア・シンガポール高速鉄道計画事業費縮減に係る検討調査」委託業務及び「海外における高速鉄道の土木部分に係る事業費縮減の方策に関する調査」委託業務において、インフラ部分(土木関係)の事業費縮減に係る調査を行いました。また、本計画に関するマレーシア政府内の検討の深度化に資する提案を行うためのマレーシア政府と国土交通省との協議に、JRTT職員が同行しました。

2.国際協力業務

(1)海外への専門家派遣及び各国研修員等の受入

平成30年度は、北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)、北陸新幹線(金沢・敦賀間)、九州新幹線(武雄温泉・長崎間)の整備新幹線の建設や、神奈川東部方面線(相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線)の都市鉄道利便増進事業の整備が最盛期を迎えつつあり、要員事情が厳しい中、10カ国・地域に延べ36人の専門家(うち長期専門家1人)を派遣するとともに、17カ国・地域から延べ385人の研修員等を受け入れました。

平成30年度に専門家派遣を実施した国・地域 平成30年度に受け入れた研修員等の国・地域
インド、トルクメニスタン、ネパール、バングラディシュ、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、韓国、台湾、中国 アメリカ、イギリス、インド、インドネシア、オーストラリア、カナダ、カンボジア、サウジアラビア、シンガポール、スウェーデン、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス、台湾

国家的なプロジェクトであるインド高速鉄道計画においては、平成28年2月に事業主体であるNHSRCLが設立され、組織体制の構築が図られる中、平成 30年度は、NHSRCLの組織能力強化のアドバイザーや、JICが担う詳細設計業務への技術協力として、専門家延べ5人を派遣しました。
各専門家は、単に求められた業務を行うだけにとどまらず、効率的な工事計画を率先して提案・調整したり、NHSRCLとの協議において直接説明を行ったりするなど主体的に取り組んでおり、NHSRCLが本線土木工事主要工区の入札公示を行うに至るなど、計画の進捗に寄与しました。専門家の技術力について、NHSRCLから高く評価されるとともに、専門家の貢献について、JICからも大変感謝されています。
また、平成28年3月に始動したJICA制度整備支援プロジェクトに伴いJICA内に設置されているインド国高速鉄道建設事業に係る技術基準/設計支援委員会にJRTT職員3名が参加するとともに、同委員会の下部組織である分科会にJRTT職員延べ18名が参加しています。
加えて、インド鉄道省の職員を対象とした新幹線建設現場への視察研修等の受入(6回、延べ198人)や、NHSRCLの職員を対象とした新幹線建設現場への視察研修等の受入(8回、延べ48人)を行いました。
さらに、技術移転のための日印の企業同士の交流会(場所:日本、インド)において、JRTT職員が新幹線技術を紹介し、交流促進に貢献しています。

インド調査

NHSRCL職員 北海道新幹線トンネル工事視察

そのほか、IHRAの国際フォーラムで集まった各国高速鉄道関係者等との意見交換や九州新幹線建設現場への視察受入(12カ国・地域、71人)等を行うとともに、インドで開催されたIHRA、在インド日本大使館、国土交通省及びNHSRCL共催の海外国際セミナーにおいて、JRTT役員が、日本における高速鉄道建設事業の推進をテーマとした事例発表を行うなど、我が国鉄道技術の国際市場へのアピールを行いました。

IHRA国際フォーラム講演IHRA国際フォーラム(金沢)における機構職員講演

(2)国際学術会議等への参加

JRTTは、世界の鉄道技術関係者との交流を図り、日本の鉄道システムの海外展開の一助となし、また、JRTTの鉄道建設に関する技術力についてアピールすること等を目的として、国際学術会議等へ参加し、講演やプレゼンテーションを実施しました。

会議等名 主催者等 開催国(都市) 時期
第44回 国際トンネル協会会合 国際トンネル協会(ITA) アラブ首長国連邦(ドバイ) 平成30年4月

第20回 中国科学技術協会総会

中国科学技術協会(CAST) 中国(杭州) 平成30年5月
第11回 国際ジオシンセティックス会議 国際ジオシンセティックス学会(IGS) 韓国(ソウル) 平成30年9月
韓国高速鉄道経済フォーラム国際セミナー 韓国交通研究院(KOTI) 韓国(ソウル) 平成30年12月
(3)鉄道分野における規格の国際標準化

平成22年4月に、(公財)鉄道総合技術研究所内に「鉄道国際規格センター」が設立され、鉄道技術の国際標準化に戦略的に取り組んでいます。
JRTTは、ISO/TC269、IEC/TC9等に職員8名が参加し、国際規格に関する日本原案の作成等に貢献しています。

ISO/TC269委員会・作業部会等
国内委員会 鉄道分野
国内分科委員会 SC1(インフラストラクチャ)
国内作業部会 軌道品質評価
地震時におけるモニタリングとオペレーション
IEC/TC9の委員会・作業部会等
国内委員会 鉄道用電気設備とシステム
国内作業部会 直流信号用リレー国内作業部会
トロリ線国内作業部会
電力システム国内作業部会
直流開閉装置国内作業部会
銅及び銅合金ちょう架線規格作業部会
UGTMS(都市交通システムの制御体系に関する規格)国内作業部会
鉄道EMF国内作業部会
地上電力貯蔵システム国内作業部会
交流電力補償装置国内作業部会
変電所用コンバータ国内作業部会
国内検討会 列車制御無線検討会
(4)海外関係機関との技術交流等

JRTTの技術力や経験を活用し、海外関係機関との技術交流等を行いました。
○スウェーデン
スウェーデン高速鉄道は、同国内の主要都市(ストックホルム、マルメ、ヨーテボリ)を連絡するものである。平成25年5月に国土交通省とスウェーデン産業省との間で鉄道分野における協力に関する覚書が締結されたことから、本格的な技術交流を開始しました。
平成30年度は、5月にスウェーデン運輸庁から1名がJRTTに来訪し、高速鉄道について意見交換を行いました。12月にはスウェーデン運輸庁の6名が九州新幹線(西九州ルート)の視察を行い、土構造について意見交換を行いました。2月にはJRTTから6名がスウェーデン運輸庁へ訪問し、地下鉄建設の視察とスウェーデン高速鉄道についての意見交換を行いました。
○その他の取組み
JICAの「鉄道セクターにおける有償資金協力業務関連成果物に対するプルーフエンジニアリング」業務において、JICAが円借款にて支援する事業の実施に向け本邦コンサルタントが作成した詳細設計の内容について確認を行うとともに、今後の他案件でのコスト積算に当たっての改善点・留意すべき事項の提言のとりまとめ等を行いました。