鉄道のある風景写真コンテスト

受賞作品一覧

令和7年9月4日(木)第26回「鉄道のある風景写真コンテスト」審査会を実施しました。

今年も季節を感じる多彩な鉄道写真が多数集まり、皆様のご応募に感謝申し上げます。

入賞・入選作品を以下にご紹介いたします。(敬称略)

グランプリ(国土交通大臣賞)

中根 伸博

『ウィンドウの中のウィンドサーフィン』

東日本旅客鉄道 東海道本線 茅ケ崎駅~平塚駅


【審査委員長講評】

 一目で「湘南」をイメージさせる作品です。東海道本線を表すオレンジとグリーンのライン、そしてキラキラと輝く大海原。それだけでも湘南を感じることはできますが、グランプリとはなりません。グランプリに選出した決め手は窓越しのウインドサーフィンです。絶妙なスローシャッターで窓をしっかり抜けさせ、普通車と2階建てグリーン車の境界を利用してJR東日本エリアということを匂わせつつ、高さの違う窓にそれぞれウインドサーフィンを入れるという演出。列車が来る直前にこの表現を思い付く発想の豊かさに脱帽いたしました。

四季賞

春賞(「鉄道の日」実行委員会会長賞

梅澤 泰介

『桃源郷を見下ろして』

わたらせ渓谷鐵道 わたらせ渓谷線 神戸駅~小中駅

【審査委員長講評】

 花桃と桜に包まれる駅として有名な神戸駅。多くの観光客とカメラマンで大にぎわいとなり、駅の跨線橋は一番人気の撮影スポットになっています。その様子を背後から俯瞰撮影して神戸駅の春を独り占めしたかのようなアングルが素晴らしいです。花と列車だけで撮りたいという気持ちが自然でしょうが、ずらりと並ぶカメラマンを入れたこの風景がまさに春の神戸駅であり、作者の視野の広さを感じ取ることができます。

夏賞(「鉄道の日」実行委員会会長賞)

長尾 英恭 

『境界線』

高松琴平電気鉄道 琴平線 瓦町駅~片原町駅

【審査委員長講評】

 四季の中で夏を表現するのはとても難しいものです。深緑や入道雲で表現することが思いつきますが、暑さまでの表現にはなかなか至りません。琴電の古豪電車からの排熱が陽炎となって、車両と車掌にまとわりつくようなシーンはまさに暑さをストレートに感じることができます。また、モノクロ表現をすることによって、より陽炎に注目させることに成功しています。無彩色なのに盛夏を感じさせる素晴らしいカメラアイです。

秋賞(国土交通省鉄道局長賞

村上 敏幸

『舞い上がる滝煙』

富士山麓電気鉄道 富士急行線 都留文科大学前駅~十日市場駅

【審査委員長講評】

 富士急行線と田原の滝のコラボレーションはとても有名で、多くの写真が世に出ています。そんな中で滝しぶきが斜光に輝くこのシーンは、紅葉の鮮やかさと相まってとても幻想的です。この美しい状況は長続きをしませんし、水量が多くないと成立しません。列車の通過時刻と光線状態がピッタリ合うこの瞬間を予想してみごとに捉えました。きっとこの瞬間を狙いたいと思う人が増えることでしょう。

冬賞鉄道・運輸機構理事長賞

菅原 修

『残り柿に見守られて』

秋田内陸縦貫鉄道 秋田内陸線 上杉駅~米内沢駅

【審査委員長講評】

 モノトーンの冬景色に浮かび上がる鮮やかな残り柿。秋田内陸線沿線には柿の木が多いと聞きますが、背景の蔵も合わせて秋田らしい雰囲気を醸し出しています。そして特筆すべきは雪の表現。雪というものは大粒の雪でかつ背景を暗くしないとなかなか写真に表現できません。暗い森をバックにすることで雪と列車が浮かび上がり、風景が立体的に表現されていることが素晴らしいです。まるで現場に立っているかのような錯覚さえ覚えます。

シティ・トレイン・ビュー賞

栗原 正隆

『ウインターイルミネーション』

阪堺電気軌道 上町線 天王寺駅前停留場~阿倍野停留場

【審査委員長講評】

 阪堺電車というと、古豪のチンチン電車がのんびり町を走るイメージが強いですが、イルミネーションの中を疾走する超低床車のシーンはまさにシティ・トレイン・ビュー。魚眼レンズを使用したスローシャッターによる振り子流し撮りは技術的にかなり難しいですが、みごとに成功させています。阪堺電車の新たなるイメージを感じさせてくれた秀作です。

ジュニア賞

遠藤 浩志朗

『汽笛一声』

真岡鐵道 真岡線 真岡駅

【審査委員長講評】

 たそがれの空にたなびくSLの煙に郷愁を感じさせる渋い写真ですが、作者はなんと9歳。私が子供のころだったら、間違いなくSL全体を撮ろうとすると思いますが、煙を主題にするこのセンスには審査員一同驚きました。また、夕日の配置も秀逸で、この先どんな素晴らしい鉄道写真を撮り続けるのか大いなる期待でいっぱいです。

入選

横山 正之 

『桜が彩る幻想シーン』

東日本旅客鉄道 東北新幹線 那須塩原駅~宇都宮駅

【審査委員長講評】

 マジックアワーに満月、そして桜というじつに幻想的なシーンです。条件を計算し完璧な状況での撮影がみごとに成功しています。光跡が新幹線ということを私はすぐに理解しましたが、条件的に致し方ないとはいえ、鉄道感が少し弱いのが惜しいところです。

井上 修 

『軽トラをゴボウ抜き』

平成筑豊鉄道 田川線 犀川駅~崎山駅

【審査委員長講評】

 農家の皆さん、軽トラ、そして列車の配置。さらに畑のラインの活かし方がじつに素晴らしいフレーミングです。タイトルからゴボウ畑ということが分かりましたが、このユーモアあふれるタイトルがなかなか上手いセンスです。計算し尽くされた作品なのに、クスッと笑えるという秀作です。

船越 知弘

『最強ランナー登場』

ひたちなか海浜鉄道 湊線 金上駅~工機前駅

【審査委員長講評】

 きっと普段はのんびりした商店街なのでしょうが、恒例のマラソン大会ということで、ものすごいランナーの迫力です。列車の通過と合わせて作者は毎年狙っているとのことですが、そう簡単には撮れないであろう瞬間です。マラソン大会の幕をしっかり入れた状況説明もとても大切な視線です。

品原 一之

『南阿蘇の秋をゆく』

南阿蘇鉄道 高森線 南阿蘇白川水源駅~見晴台駅

【審査委員長講評】

 鮮やかなモミジの紅葉に太陽の光芒、そしてかわいらしいトロッコ列車。美しい秋のひとときを素直に撮った、ほのぼのとした写真です。逆光による透過光を活かすことによってモミジの鮮やかさは増し、風景に輝きと立体感を出すことに成功しています。

大宮 知

『朝陽に輝く』

北海道旅客鉄道 根室本線 富良野駅~野花南駅

【審査委員長講評】

 霧氷に包まれた冬晴れの朝。厳冬の感動的なシーンですが、そう簡単には撮れません。厳しい北国の冬は晴れることは少なく、ましてや霧氷がびっしりと付く条件はめったにありません。少ないチャンスをみごとに捉えた、我々が簡単に見ることができない貴重な絶景です。

居安 芳和

『朝露に濡れる』

西日本旅客鉄道 因美線 美作河井駅~那岐駅

【審査委員長講評】

 朝露が輝く稲穂と背景の朝霧のコラボレーションがじつに美しく、夏の田んぼの匂いを感じされてくれます。さらに、朝霧の向こうにおぼろになった太陽が旅情を感じさせてくれます。始発列車はやはりドラマがありますね。早朝から撮影した甲斐がありました。

山岡 佳久

『盛夏』

東日本旅客鉄道 八戸線 鮫駅~陸奥白浜駅

【審査委員長講評】

 もくもくの入道雲、青い海、そして白い灯台と、まさに「盛夏」を表現した写真です。「やませ」が吹き込んだことによる大気のせめぎ合いは、北東北ならではの夏景色でもあります。本数の少ない列車通過時に、この奇跡的なシーンに出合えたことは運のように感じますが、この瞬間に現場にいたという作者の実力なのです。

総評

 第26回より新しい審査委員による選考となり、審査委員長として初めての審査ということでとても楽しみにしていました。昨年を大きく上回る1,053点のご応募があり、そのレベルの高さに審査員一同、嬉しさと驚きでいっぱいでした。

 「鉄道のある風景」がテーマですが、目の前にある鉄道風景を単に撮るのではなく、その季節ならではの貴重な瞬間を狙い、しっかりとした撮影技術で捉えた作品が多く感動しました。事前に撮影意図をしっかり持って撮影地へ赴き、そこに偶然性や奇跡と思えるような事象が融合することによって、見る人を感動させる写真が生まれます。

 入賞作品のすべてにおいて、作者の気持ちは相当高ぶる状況だったと思いますが、冷静にフレーミングして確実に撮影されています。日頃から鉄道はもちろん、それを取り巻く風景を考察し、身体に染みつくほど鍛錬された撮影技術の賜物と言えるでしょう。

 グランプリの作品は、風景の中にある鉄道ではなく、鉄道の中に風景を表現するという、他の応募写真では見られない狙いが一歩秀でていました。次回以降も引き続き、審査員をハッとさせる「鉄道のある風景」を拝見できることを楽しみにいたしております。

写真家/日本鉄道写真作家協会会長  長根 広和

審査委員

審査委員は、下記の方にお願いしました。(敬称略)

審査委員長

長根 広和(写真家/日本鉄道写真作家協会会長)

審査委員

金子 雄一郎日本大学 教授

矢口  正子(㈱交通新聞社 出版事業部 副部長)

五十嵐 徹人(国土交通省鉄道局長)

藤田  耕三(鉄道・運輸機構理事長)

入賞・入選作品の展示

第32回鉄道フェスティバル会場(東京・お台場) 令和7年1011日(土)~ 10月12日(日)
鉄道博物館(さいたま市大宮)

令和7年1022日(水)~ 11月3日(月)

ことでん 瓦町駅(瓦町FLAG

令和7年1111日(火)~ 11月25日(火)

神戸高速鉄道 新開地駅(メトロこうべ中央広場) 令和7年12月3日(水)~ 12月17日(水)
つくばエクスプレス 浅草駅 令和7年12月24日(水)~ 令和8年1月7日(水)
東京臨海高速鉄道 東京テレポート駅 令和8年1月14日(水)~1月28日(水)

第26回「鉄道のある風景写真コンテスト」の概要

主  催

「鉄道の日」実行委員会、独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構

テ ー マ

日本の四季折々の「鉄道のある風景」を題材とした作品

受付期間

令和7年7月1日(火)~8月31日(日)

受賞作品

グランプリ(国土交通大臣賞)          1点
四季賞  春賞、夏賞、秋賞、冬賞        4点
(四季賞の中から、鉄道の日実行委員会会長賞2点、国土交通省鉄道局長賞1点、鉄道・運輸機構理事長賞1点 を選出)
シティ・トレイン・ビュー賞           1点
ジュニア賞(※18歳以下を対象)         1点
入選                      7点

  第26回「鉄道のある風景写真コンテスト」募集要領.pdf

  応募票・作品情報票.doc

入賞・入選作品

過去に実施したコンテストにおいて、入賞・入選した作品をご紹介致します。