第23回(2022年)入賞・入選作品

令和4年9月5日(月)第23回「鉄道のある風景写真コンテスト」審査会を実施しました。          今回は鉄道開業150周年を記念して、例年のテーマ「鉄道のある風景」(テーマA)に加え、「鉄道」を題材とした思い出の作品(テーマB)も募集しました。

入賞・入選作品は以下のとおりです。(敬称略)

受賞作品一覧

グランプリ・国土交通大臣賞

石木 憲 『始発列車の閃光』
東日本旅客鉄道 只見線 早戸駅~会津宮下駅
【審査委員長講評】
暗闇の中、トンネルからヘッドライトの閃光が積雪した線路だけを浮かび上がらせた一瞬を見逃すことのないシャッターチャンスに感服しました。浮かび上がった線路の質感、特に枕木の質感がこの作品を強く印象づけてくれたことで、より鮮烈なインパクトを与え素晴らしい作品になりました。

審査委員長特別賞(「鉄道」を題材とした思い出の作品)

渡部 円 『ふたつの世界』
東日本旅客鉄道  東京駅  2022年8月3日撮影
【審査委員長講評】

東京駅丸の内地下南口に、かつて東海道本線を走った花形蒸気機関車C62の動輪が展示されています。その動輪をメガネにたとえ、右目の花屋さんから花を買い、左目の丸の内南口から未来の鉄道にお花を届けに行く。そんなストーリーが生まれそうなユーモア溢れる作品に、鉄道開業150年記念賞にしました。

四季賞

春賞(「鉄道の日」実行委員会会長賞)

猪股 千枝子

『夕陽と水田とラベンダー編成』

北海道旅客鉄道 室蘭本線 有珠駅~長和駅

【審査委員長講評】

題名にあるように夕焼け空・特急北斗・夕日に染まる水田と、それぞれの役割を見事に配置されました。特に、田ならしをしている田植え機を前面に配置したことで、この区画を終われば今日の仕事が終わりなのでしょうか?この田ならしの風景が、優しく・暖かい雰囲気の作品にしてくれました。

夏賞(鉄道・運輸機構理事長賞)

小板橋 美次 『輝く旅路』
西日本旅客鉄道 山陰本線 須佐駅~宇田郷駅
【審査委員長講評】

青空・夕陽・ハイアングル・ローアングルとまさに、山陰本線での超有名な撮影地です。このような海を眼前にしながらよくぞ沈着冷静にフレーミングした作者の力量と観察眼に感服しました。しかし、海といえば海、空といえば空に見えてしまう自然が見せてくれる表情はすばらしいですね。まだ見ぬ光景に出会えるのを楽しみに線路端をさまよいましょう。

秋賞(国土交通省鉄道局長賞)

山口 徹 『錦秋の雑木林』
西武鉄道 多摩湖線 多摩湖駅~武蔵大和駅
【審査委員長講評】

紅葉した雑木林を広角レンズで大胆に撮りこむことで広々とした、まさに一目爽やか秋の武蔵野を表現した、気持ちのいい作品になりました。

何気ない風景も、自身のカメラポジションやレンズワークでいかようにも変わるので、アングル探しの楽しみを痛感させられました。

冬賞(「鉄道の日」実行委員会会長賞)

小川 広子 『SL冬の里山をゆく』
西日本旅客鉄道 山口線 鍋倉駅~徳佐駅
【審査委員長講評】

SL撮影といえば、やはり煙が命と言われるぐらい力強い噴煙の形に一喜一憂しがちですが、作者は朱色の柿の木を主題に選んだのです。薄っすらと雪化粧した里山を白煙たなびかせながら行くSLの姿に、時代を超えたやすらぎを感じさせてくれる素敵な作品になりました。

シティ・トレイン・ビュー賞

内山 省三 『夕暮れの旦過市場』
北九州モノレール 香春口三萩野駅~旦過駅
【審査委員長講評】

北九州の台所旦過市場とビル群の中を走るモノレールを水鏡に写し込まれたこの作品に時の流れを見るようでした。モノレールを少し低速シャッターでブラスことにより都会感をより強調されました。シティ・トレイン・ビュー賞にふさわしい作品でした。

ジュニア賞

荒田 拓 『国鉄色・小京都』
西日本旅客鉄道 伯備線 備中高梁駅~木野山駅
【審査委員長講評】

備中高梁駅近くの武家屋敷通りからですかね? 鉄道は主要街道沿いに建設されてきました。作者は旅好きなのと、歴史が好きなのでしょうか、強者が辿った足跡を見たかったのでしょうか? 望遠レンズで古い町並みを圧縮することで主役の特急「やくも」が、過去と現在をコラボレーションさせてくれたような作品になりました。

入選:四季折々の「鉄道のある風景」(テーマA)

松田 常義 『晩秋の明鏡止水』
東海旅客鉄道 名松線 家城駅~伊勢竹原駅
【審査委員長講評】

作者は、秋に撮りたいから撮ったそうですが、このシンメトリーの構図の中、さざ波もなく川面に列車が写り込んでいたら一服の作品になったことでしょう。

樋口 精一 『ねむの花の向こうに・・・・』
東日本旅客鉄道 磐越西線 喜多方駅~山都駅
【審査委員長講評】

何も文句をつけようのないしっかりとした構図です。SLばんえつ物語の存在感、対比するねむの木のボリューム感と、風景写真の基本的要素を満たした作品になりました。

佐藤 茉利生 『清流のニューフェイス』
東海旅客鉄道 高山線 白川口駅~下油井駅
【審査委員長講評】

今年7月JR東海特急「ひだ」号が、新型車両HC85系でデビューしました。この撮影ポイントに行くには川砂に足を取られながらも、如何に川面までカメラを近づけるかがポイントです。青空に川面の流れ、作者の撮りたい思いが全てかなった作品になりました。

伊藤 洋 『紅葉の朝』
西日本旅客鉄道 大糸線 中土駅~北小谷駅
【審査委員長講評】

写真における明と暗、使い方はいろいろありますが、ここまでの不思議な明暗の使い方に感銘しました。最初、夜間撮影に紅葉の写真を合成したように見えたからです。自然はこのような光線状態に巡り合わせてくれるのですね。この先、如何なる光景に出会えるのかますます楽しみが増えますね。

饗庭 正志 『雲海晴れゆく中』
九州旅客鉄道 豊肥本線 内牧駅~阿蘇駅
【審査委員長講評】

阿蘇五岳の涅槃像、その姿を撮り込むには大変な努力が必要です。涅槃像が静かに目覚める時間の経過を感じることのできるような作品になりました。       綺麗な朝靄、あと2分早ければ一番列車もクリアーに見えたことでしょう。

大藪 琢也 『木の根明く』
東日本旅客鉄道 只見線 大白川駅~只見駅
【審査委員長講評】

春の訪れは、いろいろな光景に見ることが出来ます。「山笑う」芽吹きの初めは紅葉のような淡い芽吹きなど、作者はその狭間の色合いに卓越しているのでしょう。雑木林の新緑に焦点を合わせず、木の根元の「根開き」に焦点を合わせたのです。きっと、本当の春の訪れを感じる催事なのでしょう。

生川 淳 『待ちわびた春』
北海道旅客鉄道 富良野線 上富良野駅~美馬牛駅
【審査委員長講評】

春の訪れを待ちわびた作者の思いが画面いっぱいから伝わってきます。撮影時列車が来た瞬間はさぞかし気持ちよかったことでしょう。誰しもが憧れる5月中旬から秋にかけての北海道は魅力一杯です。勿論冬も。北海道の風景にはまだまだ、見たことない未知の風景が展開しているのでしょう。

入選:「鉄道」を題材とした思い出の作品(テーマB)

伴 勝彦 『親父からの思い出のプレゼント』
日本国有鉄道  新大阪駅 1965年撮影
【審査委員長講評】

素敵なそして大切な思い出の写真を応募していただき感謝します。当時小生もまだ高校生でしたが、この時代写真には貴重な価値観がありました。この一枚の写真から、お父様のわが子にそそぐ愛情が十分に伝わってきます。写真はその時代の大切な記録になります。これからもご家族皆様の記念写真をたくさん残してください。

植野 幸帆 『過去と現在の融合探訪』
のと鉄道  能登線(廃線) 2020年11月撮影
【審査委員長講評】
廃線跡の敷地内に置かれた車両。作者は生後半年の我が子を連れて初めての家族旅行で訪れたとのことですが、柔らかな木漏れ日を浴びながら可愛い我が子をいたわる姿に、思わず足元に「きおつけて」と声をかけたくなるような作品になりました。

審査委員

審査委員は、下記の方にお願いしました。(敬称略)

審査委員長

猪井 貴志(写真家)

審査委員

中村 直美(㈱交通新聞社常務取締役コミュニケーションデザイン事業部長)

竹内 健蔵(東京女子大学教授)

上原 淳 (国土交通省鉄道局長)

河内 隆 (鉄道・運輸機構理事長)

入賞・入選作品の展示

第29回鉄道フェスティバル会場(東京・日比谷公園)

令和4年108日(土)~ 109日(日)

松山市役所

令和4年1012日(水)~ 1018日(火)

南海電鉄なんば駅

令和4年1022日(土)~ 1023日(日)

近畿日本鉄道桑名駅

令和4年1027日(木)~ 112日(水)

神戸高速鉄道新開地駅(メトロこうべ中央公園)

令和4年116日(日)~ 119日(水)

神戸電鉄谷上駅

令和4年1110日(木)~ 1113日(日)

黒部峡谷鉄道宇奈月駅

令和4年1119日(土)~ 1127日(日)

京都市市営地下鉄 烏丸御池駅

令和4年127日(水)~ 1213日(火)

つくばエクスプレス 浅草駅

令和5年 16日(金)~ 112日(木)

受賞作品一覧

入賞・入選作品