第22回(2021年)入賞・入選作品

令和3年9月3日(金)、第22回「鉄道のある風景写真コンテスト」審査会を実施しました。

入賞・入選作品は以下のとおりです。 (敬称略)

受賞作品一覧

グランプリ・国土交通大臣賞

川西 康之

『2回目の春』
えちごトキめき鉄道 妙高はねうまライン 二本木駅~新井駅

【審査委員長講評】
車窓風景をパノラマ写真のようにフレーミングしたことで、さわやかな高原の風がそよいでいるようです。久しぶりのお出かけなのでしょうか、動く展望台から雄大な風景をまさにひとりじめしている可愛い女の子の姿には、心が和まされます。コロナウイルス感染という暗く長いトンネルから「パッ」と抜け出したかような爽快な作品になりました。

四季賞

春賞(「鉄道の日」実行委員会会長賞)

宇佐美 公男

『雨上がり』
四国旅客鉄道 予土線 西ヶ方駅~真土駅

【審査委員長講評】
満開だった桜も終わり新緑の季節を迎えますが、木の葉が新緑になるまでのわずかな期間に「春紅葉」と呼ばれる春なのに秋と勘違いしてしまうような彩りを見せてくれるのです。その貴重な季節の狭間を見逃すことなく撮影した作者の観察力に感服しました。山あいにたなびく雲海が、より春紅葉の雰囲気を引き立ててくれた作品になりました。

夏賞(鉄道・運輸機構理事長賞)

遠藤 里美

『窓辺の風景』
東海旅客鉄道 身延線 入山瀬駅~堅堀駅

【審査委員長講評】
笠雲・つるし雲にはなれ雲と、まるで富士山にかかる雲の図鑑を見るようです。ご自宅の二階からの撮影とのことですが、毎日見ている富士山でしょうが、作者はよほど澄みきった青空に浮ぶこの雲群に惹かれたのでしょう。「いいな!」「おもしろいな!」という素直な気持ちでカメラをむけたことで、電車と雲がおいかっけっこしているような楽しい作品になりました。」

秋賞(「鉄道の日」実行委員会会長賞)

明野 敏行

『紅葉がお出迎え』
北条鉄道 北条線 播磨下里駅~法華口駅

【審査委員長講評】
鳥居の中を走る可愛い列車を主題に、参道をおおう紅葉を画面いっぱいに撮り込んだ画面構成に、気持ちのいい風がそよぐ音が聞こえてくるようです。優しい日差しの透過光のおかげなのでしょうか、のどかな雰囲気の中、ゆったりとした時間の流れを見ているような「鉄道のある風景写真」になりました。

冬賞(国土交通省鉄道局長賞)

岡本 一晃

『霧氷の朝』
しなの鉄道 北しなの線 黒姫駅~古間駅

【審査委員長講評】
冷え込んだ快晴の朝、一面銀世界の風景を撮りたいと誰しもが望んで撮影地に向かいます。木々に霧氷が着いているのは、午前9時半頃までが勝負です。
条件を満たした理想の風景を目の前に、黒姫山の形よし、木々の霧氷よし、通過する列車の色・位置よしと、一つ一つ確認しながらはやる気持ちをおさえて待っていたことでしょう。銀世界の美しさを存分に眼福させてくれた作品です。

シティ・トレイン・ビュー賞

外岡 宏

『2021年7月23日』
東日本旅客鉄道 京浜東北線 東京駅~神田駅

【審査委員長講評】
「2021年7月23日」東京オリンピック開催を祝しブルーインパルスが東京の空に五輪の輪を描いてくれました。そのブルーインパルスと鉄道の見事な共演を表現してくれましたね。東京のランドマークである東京駅の上空を通過するブルーインパルスをジャストタイミングで決めました。この日のための、綿密な撮影計画の成果は、貴重な時代の記録写真となりました。

ジュニア賞

内藤 拓海

『一夜限りの賑わい』
東日本旅客鉄道 信越線 横川駅

【審査委員長講評】
現場の状況を細かく観察した上で、トワイライトタイムに入る微妙な時間帯の中、横川駅の賑わう雰囲気に気を配りながら、目指す臨時列車の形式をしっかりと表現された作品になりました。的確なカメラポジションを確保するのも大変だったでしょう。夕暮れにつつまれた横川駅の雰囲気ある作品に、当時、列車が停車するたびに名物駅弁の「峠の釜めし」売りの賑わいが、懐かしく想い浮かびます。

入選

成田 清一

『無人駅のアート』
弘南鉄道 黒石線 田舎舘駅

【審査委員長講評】
地元のアーティストが、子どもやお年寄りの安全を守るという願いを込めて「目」が描かれているそうです。他の無人駅にも、近所の方々が花を植えたり、お掃除をしてくれたりと、行きかう乗客の目を楽しませてくれます。いつの日かこの田舎舘駅のベンチに座り、待合室いっぱいに描かれた「目」とにらめっこしてみたいですね。ほんわかとした優しい作品になりました。

志田 幸夫

『早朝列車が目覚めのベル』
東日本旅客鉄道 只見線 越後須原駅

【審査委員長講評】
雪深い静寂な風景の中、越後須原駅に明かりが灯り、始発駅に向かう一番列車のヘッドライトに行き先が照らし出されると、一気に暖かく優しい雰囲気に変わりました。一番列車のタイホンが、雪国に一日の始まりを知らせてくれるのでしょうか、家々の窓からもポツリポツリと電気が灯り、朝餉の支度の音が聞こえてくるような作品です。

塩野 いくお

『光環』
東日本旅客鉄道 烏山線 小塙駅~滝駅

【審査委員長講評】
自然は時に、想像を超えた光景を見せてくれるのですね。「光環」ができる条件を紐解けば、味も素っ気もなくなってしまいます。なぜなら、同じ「光環」は二度と見ることが出来ないのです。まさに、この一期一会のシャッターチャンスに出会った作者は、自身のロケハン力をフルに回転させ、このポイントに決めたのでしょう。列車にかかる光芒がより幻想的な作品にしてくれました。

石井 道之

『只見の美しい春』
東日本旅客鉄道 只見線 早戸駅~会津水沼駅

【審査委員長講評】
目の前に広がる新緑眩い只見線の春を満喫しながら観察し、列車の位置を決め、手前の菜の花をアウトフォーカスにする事で写真に奥行きをだすなど、四隅まで配慮された画面構成には感服しました。撮影地で小躍りしながらカメラをセットしている作者の姿が容易に浮かんできます。まさに「山笑う」新緑最盛期の爽やかな風景を見事に表現した作品になりました。

荒木 貴啓

『里の休息』
西日本旅客鉄道 津山線 牧山駅~野々口駅

【審査委員長講評】
タイトルに「里の休息」とありますが、何故かこの作品を拝見しますと、棚田に水が張り、田植えが始まりやがて、たわわに実った黄金色の稲が見えてくるのです。それは点在する家並のせいなのか、四季の風景によく似合う昔懐かしいタラコ色のディーゼルカーのせいなのか、デジャブの世界に迷い込んだかのような不思議な夢を見させてくれた作品です。

服部 浩樹

『厳冬の汽笛』
北海道旅客鉄道 根室本線 釧路駅~東釧路駅

【審査委員長講評】
釧路川に接岸する氷花を際立てさせるため、あえて作者は順光を選ばず逆光を選んだのです。その効果は燦々と輝く太陽と共に、氷花の質感が物語っています。SL冬の釧路湿原号が行く煙の形もいいですね。ただ、蒸気機関車の位置が連結された客車の位置ぐらいでしたら、より画面に安定感のある作品になったことでしょう。主役のシャッターポイントが作品のすべてなのですから。

横井 規和

『ダイヤモンド富士』
京浜急行電鉄 本線 屏風ヶ浦駅~上大岡駅

【審査委員長講評】
ダイヤモンド富士と言えば、山中湖が有名ですが、大都会の住宅街に鎮座するダイヤモンド富士はより神々しく見えますね。都会の中からもこんなに綺麗に富士山が楽しめるのですね。この撮影地は作者がよく通うお気に入りのポイントとのことですので、これからもライフワークとして富士山の見える日に、四季を撮り込んだ定点撮影も見てみたくなるような作品です。

審査委員

審査委員は、下記の方にお願いしました。 (敬称略)

審査委員長

猪井 貴志 (写真家)

審査委員

竹内 健蔵 (東京女子大学教授)
中村 直美 (㈱交通新聞社常務取締役第2出版事業部長)
上原  淳 (国土交通省鉄道局長)
河内  隆 (鉄道・運輸機構理事長)

入賞・入選作品の展示

令和3年10月18日(月)~28日(木) 高知市役所(とさでん交通)
令和3年11月3日(水) 高松琴平電気鉄道 瓦町FLAG
令和3年11月8日(月)~16日(火) つくばエクスプレス 浅草駅
令和3年11月19日(金)~25日(木) 神戸電鉄 谷上駅
令和3年12月1日(水)~7日(火) 京都市交通局 烏丸御池駅
令和3年12月13日(月)~20日(月) 京阪電気鉄道 中之島駅
令和4年1月6日(木)~17日(月) 近畿日本鉄道 桑名駅

※高松琴平電気鉄道の展示場所 仏生山駅 → 瓦町FLAG に変更

入賞・入選作品