第21回(2020年)入賞・入選作品

令和2年9月4日(金)、第21回「鉄道のある風景写真コンテスト」審査会を実施しました。

入賞・入選作品は以下のとおりです。 (敬称略)

受賞作品一覧

グランプリ・国土交通大臣賞

野口 茂樹

『花火』
東日本旅客鉄道 磐越西線 日出谷駅~鹿瀬駅

【審査委員長講評】
夜間撮影で最もドラマチックな時間帯は、トワイライトタイムと呼ばれる微妙な時間帯です。その微妙な時間帯に通過するSLを引き立てるため背後に架かる道路の外灯で鉄橋を浮き立たせ、通過時に上がるであろう花火の灯りで山肌のグラデーションを出すなど、この「花火」という作品には作者の細やかな配慮を見ることができました。SL通過時には美しい白煙を残し、窓明かりのぬくもりまでも感じさせてくれました。その上、阿賀野川が見事までの水鏡となりシンメトリー構図のお手本のような素敵な作品になりました。

四季賞

春賞(鉄道・運輸機構理事長賞)

荒木 貴啓

『もうひとつの春』
西日本旅客鉄道 因美線 三浦駅

【審査委員長講評】
うららかな日差しを浴びた穏やかなローカル駅のワンシーンを、ホームに設置された四角い後方確認ミラーを額縁にしたことで、ちょっとワンダーで爽やかな作品になりました。額の中で入線する列車と待つ人の存在感がいいですね。
自分が見て感じたままを素直に、でもちょっとおしゃれに撮りたいとの想いからか、画面をハイキーにしたことでその雰囲気が引き立ちました。撮影現場で楽しみながらアングルを探す作者の姿に好感さえもてます。

夏賞(「鉄道の日」実行委員会会長賞)

上田 康恵

『列車を待つ2人』
四国旅客鉄道 予讃線 下灘駅

【審査委員長講評】
下灘駅は、青春18きっぷのポスターや、多くの映画・ドラマのロケ地でも使われ、日本一海に近い駅で一度は降りてみたい駅として有名になりました。ここ下灘駅に佇む二人はなにを話しているのでしょうか?あえてモノクロで仕上げたこの作品からはいろいろな物語を創ることできそうです。作者も、駅に佇む二人を見て自身の青春時代を回想しながらシャッター切ったのでしょう。何か「ホット」とさせられる作品です。

秋賞(国土交通省鉄道局長賞)

岩田 壮一

『鮮烈なる秋景』
北海道旅客鉄道 根室本線 東鹿越駅~金山駅

【審査委員長講評】
光が創り出す陰と陽をバランスよく配置することで、写真に立体感と奥行を持たせ、列車の存在感をしっかりと意識した作品になりました。題名にある「鮮烈なる秋景」を見事に表現されています。また、この日は雲一つない青空なのでしょうか、湖面の青がなぜか印象的に残りました。まさに作者のこだわりとロケハン力の成果です。有名撮影地に想いを馳せ、豊かな想像力を持って探せばまだまだ劇的な風景に出会えることができるのですね。

冬賞(「鉄道の日」実行委員会会長賞)

大藪 琢也

『天使が舞い降りた日』
津軽鉄道 津軽飯詰駅~毘沙門駅

【審査委員長講評】
津軽の冬は垂れ込む雲に一喜一憂させられますが、自然がおりなす光景との貴重な出会いを見逃すまいと、しっかり雲の明と暗を見極めて捉えようとした作者の気持ちがよく伝わってきます。一面覆いつくす黒雲の合間から差し込む光芒はまさに天使が舞いながら、沈みゆく夕日の中に浮かぶ列車の姿を見守るかのように見えます。ドラマチックな作品になりました。

シティ・トレイン・ビュー賞

佐野 嘉春

『ブルーアワーを駆ける』
東日本旅客鉄道 東北新幹線 仙台駅

【審査委員長講評】
俯瞰撮影の醍醐味は高いところから目の前に広がる大パノラマを独り占めできる満足感を得られることです。都会のビル群のディテールを損なわず、街の明かりもブレすぎないようISO感度をあげることで、宝石をちりばめたかのような絶妙な時間帯を表現することができました。これからも自身のイメージを膨らませてどんどん新しいことにチャレンジしてください。

ジュニア賞

前川 佳輝

『雨に打たれて』
京都鉄道博物館

【審査委員長講評】
SL全盛の時代にタイムスリップしたかのような記憶の中の日本の原風景を見るようです。現役時代の蒸気機関車を知らない作者が試行錯誤した結果モノクロを選択したことで当時の雰囲気が漂ってくる作品になりました。それにしても、もの凄い豪雨の中、作者もずぶ濡れになりながらも的確なシャッターチャンスで決めましたね。これで、SLにかけられたヘッドマークと父親のTシャツを変えたら昔と変わらない情景かもしれませんね。

入選

佐々木 英樹

『水鏡風情』
西日本旅客鉄道 越美北線 牛ヶ原駅~計石駅

【審査委員長講評】
この作品を目にした瞬間、思わず逆さに見てしまうくらい美しい水鏡に出会えましたね。実車を入れず田植えの終わったばかりの水鏡になった田んぼを、見事なまでに美しい作画構成で「鉄道のある風景写真」として表現してくれました。
植えられたばかりの苗が、水彩画を書く筆跡のパターンに見えました。撮影地を固定観念にとらわれず、新しい何かを探し求めたご褒美のような作品になりました。

樋口 精一

『季節の狭間に』
東日本旅客鉄道 磐越西線 尾登駅~荻野駅

【審査委員長講評】
「早起きは三文の徳」とよく言いますが、再チャレンジしてくれた作品が、ここまで美しい風景に出会えるとは、作者はお天気の女神さまに好かれているのですね。しかし、自然はここまで幻想的な風景を創り出してくれるものなのですね。三文どころか宝の山に出会ったような作品です。この光景を前にワクワク・ドキドキしながら通過する列車を待つ作者の心情が手に取るように伝わってきます。

峯坂 和彦

『最果てのサファリパーク』
北海道旅客鉄道 根室本線 落石駅~別当賀駅

【審査委員長講評】
作者は、過去2回グランプリを受賞した強者です。ここ根室本線 別当賀―落石間は北海道らしい雄大な風景が展開する有名撮影地です。今回作者は雄大な風景に惑わされることなく線路の近くに群がるエゾシカの群れに焦点を定めたのですね。目の前に展開する情景を観察し、これまで培った経験・考察力を臨機応変に状況判断しテーマを見極めたのでしょう。まさに、最果てのサファリパークですね。

登坂 直紀

『幻影』
丸瀬布森林公園いこいの森

【審査委員長講評】
ここ、丸瀬布森林公園に走る雨宮21号は、多くの鐵道ファンの夢を叶えてくれる色々なイベントを開催しています。完璧にライトアップされた闇夜の舞台に浮かび上がる雨宮21号の蒸気をはく幻想的な姿は、まさに映画のセットのワンシーンですね。幹線、在来線ではかなわぬ夢の世界を撮影できるワンダーランドです。

山口 誠博

『穏やかな冬の日に』
西日本旅客鉄道 関西本線 月ヶ瀬駅~島ヶ原駅

【審査委員長講評】
鉄道風景写真では、列車は小さくても存在感が無ければなりません。輝くレールの上にヘッドライトを誇らしげに照らしながら近づく列車、その真上に太陽が沈みゆく光景と、見事に決まった作品になりました。漠然と眺めるのではなく、何らかの知識を持って観察したほうが見える風景が違ってきます。作者は、光が何気ない景色を特別な風景へと変えてくれることを熟知していたのでしょう。

渡辺 尚作

『ほたるの森の鉄道』
和歌山電鐵 貴志川線 山東駅~大池遊園駅

【審査委員長講評】
夜の鉄道風景は旅心をくすぐる題材でいっぱいです。窓明かりが灯る列車だけでもロマンを感じさせてくれます。夏の闇夜に乱舞する蛍の光を見つめていると、サリーちゃんが振る魔法のタクトから流れるキラキラ星のようで、サリーちゃんの呪文「マハリクマハリタ」「ヤンバラヤンヤンヤン」と聞こえてくるようです。蛍の光が消えないうちにお願いごとをしたくなるような作品です。

奈良 淳一

『渓流』
東日本旅客鉄道 磐越東線 江田駅~川前駅

【審査委員長講評】
初夏の夏井川渓谷を走る磐越東線。川面まで近づき、川を大胆に写し込むことで、迫力のある画面構成になりました。そして、清流の流れを強調するために列車がブレないギリギリのシャッタースピードを設定したことで、川の流れに動感を生むことができました。撮影現場でのチョットした気配り・アイデアの成果で、爽やかで清涼感溢れる作品になりました。尚、この辺の川沿いは滑りやすく危険ですので、くれぐれも足下に注意してください。

審査委員

審査委員は、下記の方にお願いしました。 (敬称略)

審査委員長

猪井 貴志 (写真家)

審査委員

竹内 健蔵 (東京女子大学教授)
中村 直美 (㈱交通新聞社常務取締役第2出版事業部長)
上原  淳 (国土交通省鉄道局長)
北村 隆志 (鉄道・運輸機構理事長)

入賞・入選作品の展示

令和2年10月14日(水)~23日(金) 和歌山電鐵貴志駅
令和2年11月2日(月)~12日(木) 京都丹後鉄道峰山駅
令和2年11月20日(金)~30日(月) 神戸電鉄谷上駅
令和2年12月4日(金)~16日(水) つくばエクスプレス浅草駅

入賞・入選作品