電車線
電車線設備は、列車に電気エネルギーを伝達するための設備であり、電車線の架線方式は列車の運行形態により決定されます。 機構では、高速列車に安定した電源を供給するための高速シンプル架線を開発しました。これは、鉄道に要求される利用者のニーズである列車の高速化に対応し、かつ建設コストを抑えた技術です。
北陸新幹線(高崎・長野間)から地震対策として鋼管柱を導入し、従来のコンクリート柱よりも軽量化を図りました。

架線方式
電車線の架線方式は、その鉄道に要求される速度と輸送量および経済性等により決定されます。電車線の架線方式の代表的なものを下表に示します。
直接ちょう架式
適用基準速度 | 時速50km~85km程度まで |
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適用基準負荷 | 軽負荷 |
記事 | 路面電車等 |

剛体ちょう架式
適用基準速度 | 時速90km~130km程度まで |
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適用基準負荷 | 重負荷 |
記事 | 都市地下鉄線 |

シンプルカテナリ式
適用基準速度 | 時速130km程度まで |
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適用基準負荷 | 中負荷 |
記事 | 一般鉄道線 |

き電ちょう架式
適用基準速度 | 時速130km程度まで |
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適用基準負荷 | 中負荷 |
記事 | 都市内鉄道線 |

ツインシンプルカテナリ式
適用基準速度 | 時速140km程度まで |
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適用基準負荷 | 重負荷 |
記事 | 都市内鉄道線 都市間鉄道線 |

コンパウンドカテナリ式
適用基準速度 | 時速160km程度まで |
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適用基準負荷 | 重負荷 |
記事 | 都市間鉄道線 |

ヘビーシンプルカテナリ式
適用基準速度 | 時速140km程度まで |
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適用基準負荷 | 中負荷 |
記事 | 都市間鉄道線 |

ヘビーコンパウンドカテナリ式
適用基準速度 | 時速300km程度まで |
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適用基準負荷 | 重負荷 |
記事 | 新幹線 |

高速(CS)シンプルカテナリ式
適用基準速度 | 時速300km程度まで |
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適用基準負荷 | 中負荷 |
記事 | 整備新幹線 |

高速シンプル架線
整備新幹線では、東海道新幹線などの従来新幹線に比べ列車本数も少ないため電車線も軽負荷用の設備で済むことから、経済的で且つ高速集電性能に優れた高速シンプル架線を開発し採用しました。これは、鉄道に要求される利用者のニーズである列車の高速化に対応し、かつ建設コストを抑えた技術です。
高速シンプル架線は、従来のヘビーコンパウンド架線で使用されていた補助ちょう架線を無くし、ちょう架線に電流容量を確保するため硬銅より線を使用したもので、トロリ断面積を小さくしたことも含め、建設コストの低減と保守作業量の軽減が図られました。
高速シンプル架線(CSシンプルカテナリ架線)は、芯材に「鋼:Steel」を使用し、その周りを「銅:Copper」で覆った銅覆鋼トロリ線(CSトロリ線)を使用したことにより高張力化が可能となり、パンタグラフとトロリ線とが接触した時に発生する振動が伝わる速度「波動伝ぱん速度」を早くすることができ、集電性能の向上が図られ、北陸新幹線(高崎・長野間)、東北新幹線(盛岡・八戸間)、九州新幹線(新八代・鹿児島中央間)に採用しています。
PHCシンプルカテナリ架線は、析出強化型銅合金トロリ線(Precipitation-Hardened Copper Alloy Trolley Wire)を使用した架線方式で、従来の固溶強化型合金トロリ線よりも強度、導電性、耐熱性などが優れていることから高張力化が可能となり、CSシンプル架線と同等の速度性能を有した新しい架線方式となっています。
また、銅合金であるPHCトロリ線は、ほぼ100%リサイクルできるという環境に優しい架線方式になっており、東北新幹線(八戸・新青森間)以降の整備新幹線に採用しています。
架線構造 | 線種 | 張力 | |
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整備新幹線 | ![]() シンプルカテナリ架線 |
M:PH150 T:GT-CS110 (銅覆鋼トロリ線) もしくは T:GT-PHC110 (折出強化型銅合金トロリ線) |
M:19.6kN T:19.6kN |
既設新幹線 | ![]() ヘビーコンパウンドカテナリ架線 |
M:St135 Ax:PH150 T:GT170 もしくは T:GT-Sn170 |
M:24.5kN Ax:14.7kN T:14.7kN |
直流在来鉄道においても、新たな大容量高速架線を実用化しました。
近年、都市近郊の鉄道線は、景観への配慮と保守の軽減のために、き電線とちょう架線を共用するき電ちょう架式が多く採用されてきています。機構では、き電ちょう架式での160km/h高速性能に優れた、き電吊架式コンパウンドカテナリ架線を開発しました。
き電ちょう架線と補助ちょう架線に硬銅より線PH356mm2、トロリ線に異形溝つき硬銅トロリ線GTM170mm2を使用することにより、重負荷に対応しました。また、張力はちょう架線が24.5kN、補助ちょう架線とトロリ線が14.7kNの5.5t系とし、高速化にも対応しました。