変電
新幹線変電所は電力会社から受けた特別高圧や超高圧の三相交流電力を、き電用変圧器により列車運転に必要な単相交流電力へ変換し、電車線路を介して列車にき電しています。
機構では、超高圧で受電する新幹線変電所のき電用変圧器として、構造的にもシンプルで電力特性・保護機能などに問題がなく、電力損失も少ない新型(ルーフ・デルタ結線)変圧器を開発し採用しています。
また、つくばエクスプレスでは柿岡にある地磁気観測所に影響を与えないために、負荷電流の変動にかかわらず変電所の出力電圧を一定に制御可能な電力変換装置として、PWM(Pulse Width Modulation)制御電力変換装置を開発し採用しています。
ルーフ・デルタ結線変圧器
一般に交流き電方式のき電用変圧器は、電力会社から受電した特別高圧の三相交流電源を列車の運転に必要な単相交流電源へ変換するため、スコット結線変圧器が多く用いられています。
しかし新幹線においては大容量の電源確保が必要なことから、昭和47年の山陽新幹線開業を期に、超高圧からの受電に適用した変形ウッドブリッジ結線変圧器が開発・導入され、以後建設された新幹線では、スコット結線変圧器と合わせて超高圧受電の変電所では変形ウッドブリッジ結線変圧器が標準として使われてきました。変形ウッドブリッジ結線変圧器は、一般的なスターデルタ結線の組み合わせで構成されており、変圧器の製作や中性点電流の抑制が容易な変圧器です。しかしその巻き線構造から、二次側のA座B座の出力電圧をそろえるために、B座側には主変圧器とは別に昇圧変圧器を必要とします。
今回開発したルーフ・デルタ結線変圧器は、実は変形ウッドブリッジ結線変圧器と同時期に検討された方式ですが、開発当時の設計技術では製作が困難とされ新幹線への採用には至りませんでした。しかし、近年のシミュレーションや製造技術の進歩により、数々の利点のあるルーフ・デルタ結線変圧器が再び注目され、実用化が可能となりました。
ルーフ・デルタ結線変圧器は、変形ウッドブリッジ結線のような別置きの昇圧変圧器が不要であり、またそのシンプルな巻き線構造から小型軽量、低損失化が可能であり、平成22年12月開業の東北新幹線(八戸・新青森間)の新七戸変電所に初めて導入しました。
今後、整備新幹線の建設や既存線区の機器更新においても、同変圧器の導入が進められています。
変形ウッドブリッジ結線変圧器(左)とルーフ・デルタ結線変圧器(右)の結線図
PWM制御電力変換装置
直流電気鉄道は、レールからの漏れ電流により地磁気に影響を及ぼすことが知られています。つくばエクスプレスの路線近傍では、柿岡において気象庁が地磁気観測を行い地球内部の地殻変動などを観測しています。
そこで地磁気観測所に影響を与えない方法として、負荷電流の変動にかかわらず変電所の出力電圧を一定に制御する電圧制御方式変電所を採用いたしました。これにより、レールからの漏れ電流を少なくすることが出来ます。本方式の変電所にはPWM制御方式による電力変換装置を採用しています。
複数の変電所がある直流き電系統で中間に電車がある場合、従来の方式では、隣接変電所の送り出し電圧が下がるためさらに外側の変電所からも電気を供給します。これに伴い、レ-ルからの漏れ電流も増大しその影響範囲も広がります(図-1)。
しかし、変電所の送り出し電圧を負荷の影響を受けずに一定に保てれば、電気の供給範囲は限定され、レ-ルからの漏れ電流も小さくなり地磁気への影響も軽減されます(図-2)。
き電電圧を一定に制御することが可能な電力変換装置として、PWM制御を用いた変換装置の開発を行い採用しました。この変換装置は高い電圧制御性能、低高調波、高力率などの優れた特性に加え回生インバータが不要などの利点を有しています。
PWM制御電力変換装置